大阪地方裁判所 昭和40年(行ク)2号 決定 1965年2月25日
原告(申立人) 平林真一
被告 大阪国税局長
被参加申立人 西宮税務署長
主文
本件申立を却下する。
申立費用は申立人の負担とする。
理由
原告は申立の趣旨として「原、被告間の昭和三九年(行ウ)第二八号所得税更正決定取消訴訟事件につき、被参加申立人を訴訟参加させる」旨の決定を求めた。
原告の申立の理由は、
一、原告は住所を肩書地に、事務所を神戸市生田区海岸通五番地商船ビルデイングに有する弁護士であるところ、昭和三四年度分の所得税の確定申告において、原告は訴外社団法人神戸レガツタ・エンド・アソレテイツク倶楽部より受けた収入を所得税法第九条第一項第九号による所謂一時の所得として所轄西宮税務署長(本件被参加申立人)に申告した。
二、然るところ、被参加申立人は昭和三七年一月一四日附をもつて、右は業務上の所得で一時所得でない旨の処分(更正処分)通知をして来たので、原告は同年二月一三日右処分に対し再調査の請求をしたところ、所得税法第四九条第四項第一号(昭和三七年法律第六七号国税通則法の施行に伴う関係法令の整備に関する法律第一条による削除前の規定、現行国税通則法第八〇条第一項第二号に該当)の規定により原告及被参加申立人双方合意の上、被告に対する審査請求に切り替えた。而して、被告は昭和三七年一一月三〇日付で右審査請求棄却の決定をなした。
三、然し乍ら、前記所得は一時所得であつて弁護士の業務上の所得ではないので、右原処分を維持した審査決定は不当なので、そこで原告は被告を相手に右審査裁決の取消を求めて本訴を提起したのであるが、原処分主義に基き、被参加申立人のなした原処分の取消の請求を、本訴に追加併合して提起するの必要を認め、茲に行政事件訴訟法第二〇条及第二三条の各規定に則りこの申立に及ぶ。
というものである。
よつて按ずるに、行政事件訴訟法第二三条第一項によれば裁判所は他の行政庁を訴訟に参加させることが必要であるときその行政庁を訴訟に参加させることができることとなつているが、本件申立は、被告の審査裁決の取消を求める訴に、原処分庁たる被参加申立人を参加せしむる旨の申立であるが元来、被告に対する審査裁決の取消を求める訴においては、原告は、行政事件訴訟法第一〇条第二項により被告の裁決に固有の違法事由を理由としなければならないのであるから、原処分庁を訴訟に参加させてみても、裁決固有の違法事由の存否について何ら攻撃防禦を尽さしめることはできないので原処分庁を裁決取消の訴に参加させる必要は存しないものといわねばならない。
そうして、原告が本訴において主張する被告の審査決定の違法理由は結局前記原告の所得を一時所得と認定しないで業務上の所得と認定したことによるものであるから、結局それは原処分の違法を理由とするものであつて、本来原処分庁を相手に原処分の取消を求めるべきである。それには本件においては、行政事件訴訟法第一九条、第二〇条によつて被参加申立人を相手に原更正処分の取消を求める訴を追加的に併合提起する途が存するのである。原告は、右訴の追加的併合提起の必要があるから被参加申立人を本訴に参加せしむる必要があると主張するが、右訴の追加的併合提起は直ちに被参加申立人を相手として提起することを得べく、何らその前提としてこれを本訴に参加せしめておく必要は存しない。
よつて本件原告の申立は理由がないのでこれを却下することとし申立費用につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり決定する。
(裁判官 石崎甚八 潮久郎 安井正弘)